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2010年4月7日水曜日

ハーフボイルドの原点


もう何回この人の映画を観ただろう。テレビのドラマで初めてみたのが「太陽にほえろ」での刑事役・ジーパン。その頃小学生だった俺に強烈な印象をあたえた。以来、ずっと心の中の兄貴としてリスペクトしている。
決定的にその世界観をうえつけたドラマが「探偵物語」だ。松田優作が工藤俊作に変身して、東京という街で活躍するコミカルでかつ、ヒューマンなハードボイルドアクションドラマだ。
ワンクール3か月のドラマがあたりまえの現在とくらべ、当時としても長い全27話もつづいた人気作品だった。
そのなかで工藤俊作は、さまざまな事件に巻き込まれながらも街の仲間たちを愛し、依頼者の
心の奥まで察知して、クールに解決へと導いていく。
なにがそんなに魅力的かというと、けっして完全無敵のヒーローでもなく、時には弱いところも見せ、人間臭く描かれているところだ。個性的な街の脇役たちも、とてもいきいきと演じている。そのあたりがこのドラマをより一層深みのあるものにしていると思う。
数々の名セリフも登場した。
「そんな利己的な暴力よりもほんのなにげない優しさのほうが欲しいんだ」
「この街のほうが僕のことを気に入っているみたいで、はなしてくれないです」
「俺はもっと自由でいたいんだよ」

後半になると、かなりふざけている回もあるが、楽しそうに演じていたのが印象深い。
主題歌を歌っていたSHOGUNの「BAD CITY」や「Lonly Man」は今だに聴ける名曲だ。
こんなドラマはおそらく二度と作れないだろう。

映画といえば、遺作となった「Black Rain」は最初にして最後のハリウッド進出作だった。
この映画のオーディションには、優作が演じた佐藤役に、萩原健一や、佐藤浩市などそうそうたる俳優たちがのぞんでいた。しかし、監督のリドリー・スコットと主役のマイケル・ダグラスは、即座に松田優作に決めたという逸話が残されている。それくらいハマリ役だったのだ。
鬼気迫る演技に、現場のスタッフも息をのんだらしい。
身体が癌でおかされながらも、この作品に命をかけて演じていた優作の心意気が皆に伝わったことだろう。

知っている人もいると思うが、俳優として活躍しただけでなく、ブルースシンガーとしても数々のライブをおこなっていた。
けしてうまいとはいえないが、味のある渋い歌い方に多くのファンは酔いしれたことだろう。
俺も生きている間に一度はライブを観たかった。

今、はたしてこの人を超える役者が日本にいるのか、疑問だ。
ドラマもほとんど観ることがなくなった。というかテレビを観なくなった。
もう俺が好きそうなものは今後もでてきそうにないだろう。
映画にのぞむしかないのか、本の世界でどっぷり浸かるか、過去の作品をDVDで繰り返し鑑賞するしかないのかもしれない。

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