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2009年11月30日月曜日

五感

昨日の讀賣新聞の経済面の記事
「挑む企業」に関西を代表する「スイーツ」の名店で「GOKAN」が取り上げられていた。



「社名の五感は火、水、土、風、愛の五つをテーマにしている。火は窯火、職人の情熱、水は
大自然の源、土は大地の恵み、風は季節感、愛は慈愛を示す。この五つをベースに自然と愛を
菓子に込めている。
大阪を愛するパティシエ(菓子職人)の浅田美明社長(48)は「大阪発の菓子を作ろう」と
研究を重ね、粉と卵とバターにまみれながら「日本人の心に響く洋菓子」にたどりついた。
商品は、国産の厳選された素材だけを使っている。マドレーヌの「ええもん」は日本風カステラのような風味に仕上げている。国産の小麦粉や黒大豆を配し、米アメでしっとりした食感を
出している。
「ええもんは、大阪弁でいいもののこと。子供のころ、『僕、ええもんあげるわ』とおやつをもらったものです。そんなちょっとしたぜいたくを楽しんでいただきたい」
6年前に構えた大阪・北浜の本店(大阪市中央区)は、1922年建築の旧報徳銀行大阪支店だ。瀟酒(しょうしゃ)な近代建築で、堺筋の一角で特有の存在感を示している。
日本総合研究所の金子和夫・上席主任研究員は「地域ブランドを育成するには四つのキーワードがある。商品の価値、地域性、マーケティング、消費者の信頼。五感はすべて満たし、消費者の心をつかんでいる」と評価する。
首都圏の百貨店から出店の要請もあるが関西から一歩も出ない。大阪にこだわり、北浜本店など5店のみ運営している。
12月初旬にはJR新大阪駅構内に土産専門店を開設する。商品の単価を通常より約3割下げ、手軽に買ってもらえるよう工夫する。「大阪のお菓子文化を全国に発信していきたい」。
パティシエの夢は尽きない」(立石知義)

近くなのでよく利用するが、洗練された和風洋菓子は見ていて飽きない。
もちろん味も保証付きだ。ちまたに流行している◯◯ロールとは一線をかくす。
予約しておかないと売り切れてしまう人気商品がたくさんある。まだ食べたことがない人にはぜひおすすめしたい。


2009年11月28日土曜日

Today's Lunch



阪急六甲駅周辺を朝から散歩した。ランチに使う材料を途中でみつけた地元のショップで購入する。サンドイッチにしようと決めたので、まずはMETZGEREI KUSUDA(メツゲライ・クスダ)六甲道店でロースハムをゲット。カマンベールチーズで有名なチーズショップはお休みだったのでチーズはあるものでOK。酒屋ではドイツのホットワインを購入した。
同じ道沿いにおいしそうなパティスリーや、ちっちゃいレストランなどの飲食店もあり、なかなかどの店も個性的ですてきなファザードだ。すると普段はちがう商売をしているはずの店が
クリスマスグッズ専門店になっているのを発見。ツリーに使う電飾とリボンなどを買う。こういう寄り道が楽しい。散歩の醍醐味だね。
そして夫婦でやっているおいしいパン屋さんでカンパーニュのパンをゲット。すぐ近くの台湾料理店の軒先で売っている野菜の中からリーフレタスを買って帰った。
朝から手作りのリースを完成させてから散歩にでたのでちょうどお昼くらいになった。
さっそくホットワインを暖めて、飲みながらサンドイッチを作る。カラダがポッカポカになった。完成したリースとともに記念撮影。ちょっと贅沢なランチになった。



僕らをつなぐもの 最終回

月明かりかと思ってみれば
かわる間際の黄色い信号
やたらと長い赤信号にかわれば
決まって僕らキスをするんだ
君はいつも左側を歩き
僕のポケットに小さな手を入れ
こうして触れる指先のぬくもりだけ
それだけで僕らはつながってるわけじゃない

僕らをつないでいるもの
きみが笑うから僕も笑ったね
今年もあの花が咲いたねと君が言う
今君の家に向かう途中

ガソリンスタンドの交差点は
行き交う車の音であふれて
僕らの会話がかき消されてしまわぬよう
自然とぼくらもっともっと近づいた

僕らをつないでいるもの
僕のはなうたが君にうつったね
歩道橋の上に月が見えるよと僕が言う
幼い僕らのこの恋を照らしてよ

でも多分この街灯のように
ただ弱々しく頼りない光の下に僕らいて

僕らをつないでいるもの
二人同じ明日描いているからね
この先もずっとあの花を見れるよね君が言う
今はうなづくしかできなくて

僕らをつないでいるもの
不安をふさぐようにキスをするんだね
ゆれる雲に月がかくれてしまうまえに帰ろう
今君の家に向かう途中


           作詞・曲  泰 基博

僕らをつなぐもの  8


 プロポーズ


 僕はまだMeguに正式にプロポーズしていなかった。ちょうどその頃イン

ターネットでは「ツイッター」というミニブログのようなサービスが流行し

始めていた。僕たちもさっそくこのツイッターを使い出した。

 ツイッターは百四十文字以内でただつぶやくだけのものだが、その影響力

は有名人や企業などにも波及していてミクシィやアメブロも似たようなサー

ビスをやり始めたぐらいだ。

 季節は冬の始まりを感じる寒さになってきていた。僕は今日こそMeguに

プロポーズしようとこころに決めていた。そしてまずはツイッターで公開プ

ロポーズだ。

 「おれはめぐのそばで、君がどんなおばあちゃんになるかみてみたい。そ

のために2倍でも3倍でもがんばる。結婚してください」

 Meguが返事を返してくる。

 「正直いってあたしは大変だよ。わがままだし。性格きついし。それにつ

きあえるならぜひ」

 他のユーザーたちの祝福の書きこみが殺到した。

 つづいてフォトシェアでも同じようにプロポーズした。

 Meguは

 「でも、ツイッターじゃないほううがよかったなああああ。」と書きこん

でいた。

 その日は両方とも、祝福のコメントの嵐が夜遅くまで続いた。僕たちは、

 Meguの家の近所にある小さなレストランで晩ご飯を食べようとでかけた。

もちろん面と向かってきちんとプロポーズするために。

 「Koh、あのね、子供ができたら男の子でも女の子でもいいからつけたい

名前があるの」

 「なんだい」

 「にこ」

 「えっ、にこ」

 「そう、にこちゃん」

 「なんでその名前がいいの?」

 「スマイルマークみたいにいつもニコニコしてほしいから」

 「そうかあ。にこかあ」

 Meguの提案で子供の名前はにこになりそうだ。

 「去年のクリスマスは一人で今年は3人だね」

 「そうか、3人か」

 暖かい店内のごちそうに僕たちはお腹いっぱいになっていた。

 「ごちそうさま」

 店を出ると少し早い雪がちらついていた。

 「あっ、雪だ」

 「ほんとだね」

 「Megu帰ろう」

 「うん」



 僕らをつないでいるもの


 僕には守るべきふたつの命がある。めぐとにこだ。

 新しい命とともに三人でこれから歩んでいく人生。

 ひとつひとつゆっくりと踏みしめながら進んでいくだろう。

 

 僕らをつなぐもの

 それは家族の絆へと変わった。

 


 


 



                                           

2009年11月26日木曜日

BAR Hemingway


昨日リニューアルした大丸心斎橋店を見学した後、久しぶりにスペインバール「Hemingway」
を訪れた。シニアソムリエでベネンシアドール(GONZALES BYASS社認定)の松野直矢氏がしきるこの店ははっきり言ってかっこいい。スペインワインとシェリーの品揃えが充実しており、もちろん他の酒も飲める。タパスもスペインオムレツなどの定番からサラミや生ハム、アルボンディガス(ミートボール)などの肉系も小皿で提供される。
どっしりとした赤ワインを飲みながら、フードをつまんでいると二人組の男の人達が客席奥のスペースを陣取った。一人はギターを抱えている。どうやら生ライブが始まるらしい。イスに腰かけるといきなり演奏が始まった。フラメンコギターとパーカッション(座っているイスを使う)のデュオだ。これがまためちゃくちゃうまい。そしてイイ。ここはアンダルシアか、と錯覚してしまう空気感が漂っていた。
ジプシー気分を味わえた貴重な夜だった。

http://www.bar-hemingway.com/

2009年11月24日火曜日

プロフェッショナル


NHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル」(22:00〜)を観た。
インテリアデザイナー・片山正通さんの仕事に密着したものだった。長かった不遇の時代を経て
消費者の立場に立ってデザインする店舗は、どれもクールでかっこいい。
なぜか入ってしまい、店内を見回る。ひとつの流儀である客の目線になりきるのだ。
そしてクライアントの思いをカタチにする。それこそが片山さんのデザインの核となっている。
さらにトータルでプロデュースしなければ、若者は反応してくれないことを悟る。
そのことがきっかけで一気にクライアントが増える。選ばれた責任を全うし、どろくさい作業もいとわずやり続け、考えぬいて考えぬくその姿はかっこいい。
「この男に任せれば、店に人が集まり、物が売れる」と今や、世界中から依頼が殺到している。
この秋に東京にオープンした「ナイキ」のフラッグショップも片山さんの作品だ。お客さんでごったがえす店内で微笑んでいた片山さんの素敵な顔が印象に残った。

2009年11月23日月曜日

僕らをつなぐもの  7

大切なもの


 僕はMeguを傷つけたばかりか男として責任をとれないでもがいていた。 

 なんとかしなければ、僕はとにかくMeguにもう一度会って話をしよう

と試みた。

 Meguはシングルマザーになる決意をブログにアップしていた。僕たち

のことには一切触れずに、母親になることを心から望んでいることをその

ブログには綴っていた。

 ところがフォトシェアでは事情が違った。周りのユーザーが僕たちのこ

とを心配して、たくさんのコメントをよせてきたのだ。


 「MeguたんとKohくん、どうしちゃったの?」Yossy

 「Kohくん、Meguちゃんのこと大切にしなきゃだめだよ」Cana

 「男ならMeguちゃんのこと離すなよ」jin

 「Meguちゃん、Kohくんのことキライになっちゃったの、違うよね」mayu


 とにかく僕たちを応援してくれるようなコメントの嵐に正直目頭が熱く

なった。僕の気持ちを後押ししてくれたのは言うまでもない。

 数日後、Meguの家に行った。

 「Megu、俺だよ。開けてくれないか。ちゃんと話がしたいんだ」

 しばらく沈黙の時間が流れた。するとドアがガチャッと開いた。

 「入って」

 Meguが僕を部屋に入れてくれた。

 「最初にMeguに謝りたい。俺が悪かった」

 「そのことはもういいの。ただ私はKohの気持ちが分からなくなったから」

 「目が覚めたんだ。みんなに励まされて俺にはMeguが必要だって・・・」

 「もう私一人だけの問題じゃないよ」

 「分かってる。子供のことも」

 「大変なんだよ、育てるのって」

 「Meguのことも子供のことも大切にしたい、ちゃんとしたいんだ」

 「私の仕事のことも?」

 「ああ、手伝うよ。Meguの仕事も続けられるように俺がなんとかする」

 「Kohにできるかな」

 「なんとでもするよ」

 「私、フォトシェアでコメントしてくれたみんなにこころが救われたよ」

 「俺もだよ」

 「絶対にもう二度と裏切らないって約束できる?」

 「誓う、ここに」

 そう言って胸のあたりを手でおさえた。

 「私と子供と家族を大切にしてくれる?」

 「もちろんするさ」

 本気でそう思った。僕はMeguと子供のことをすべてにおいて大切にして

いきたい。こころにかたく誓った。

 「許してくれるの?」

 Meguは泣きながらコクリとうなずき、そっと手をのばしてきた。僕は

その手を強く握りしめた。

 僕とMeguは小さなアプリケーションのおかげでこうして再びやりなおす

ことができた。

   

 


 


 


 



                

甲山



紅葉の季節も佳境に入った時期、二十何年かぶりに地元の山である甲山(かぶとやま・標高309m)に登った。
彼女と夙川で待ち合わせて阪急甲陽園駅を降りて甲山大師道沿いをてくてく歩く。
兵庫県立甲山森林公園へは、15分もあるけば着く。かなり広いこの公園はシンボルゾーンとよばれる所に噴水があり、奥のシンボル像は真ん中に甲山の頂上がくるように設置されている。きれいな色に染まった木々を眺めつつ公園を散策してから、登山道の入り口がある神呪寺
をめざす。
途中でガールスカウトやカブスカウトの少年、少女達の集団にでくわす。昔を思い出しながら
懐かしさと自然の空気をおもうぞんぶんに吸おうと思った。
神呪寺から登るコースは急傾斜だ。時間は15分程だが僕たちはわずか7分で登りきってしまった。頂上に着くと家族連れや犬の散歩にきている地元の人達が何人かいた。弁当を持参していたのでさっそくお昼にした。彼女が持ってきたガスコンロ(アウトドア用)でお湯を沸かし熱いコーヒーもいれた。野外で飲むコーヒーもまた違う味わいがあっておいしい。
休憩したあと、雲行きがあやしくなってきたので下りのコースを急いだ。帰りは目的であるクリスマスリースの材料を集めながら降りる。どんぐりやまつぼっくり、葉っぱや木の枝などよさそうなものをつぎからつぎへと拾いながら、先へすすむ。これがなかなか楽しい。じっくり
植物をみることなど普段の生活ではないことだ。途中、河原の近くまで寄り道しながら緩やかな坂を下っていった。
ふと気づくともう森林公園の入り口に戻ってきていた。全行程休憩や寄り道などを含めてもわずか3時間半くらいのコース。適度な疲れもここちよい。
甲陽園駅に戻ると雨がぱらぱらしてきたのでぎりぎりセーフか。電車に乗る前に地元の花屋さんに寄る。リースのベースになる枝のリングを見つけて購入。150円也。安い。
これに今日収穫した材料でオリジナルのリースを作るのだ。できあがりが楽しみだね。

2009年11月15日日曜日

サイドウェイズ


映画「サイドウェイズ」を観てきた。アメリカはカリフォルニアのナパヴァレーを舞台に、ワイナリーがたくさん登場する。4人の日本人の物語をおもしろおかしく演出していて観終わった後のさわやか感が今も残っている。中年といわれる40代の男女の恋愛と青春を描いたこの作品は
全編を通してワインが頻繁にでてくる。そして飲む。味わい深い内容に刺激され、晩ご飯をワインの飲める店にした。阪急門戸厄神駅のすぐ近くにある同窓生がやっている飲食店をチョイス。
カリフォルニアワインの赤をさっそく注文して、おいしいフードをこれでもかというくらいに味わった。すべてうまかった。ワインもおいしかった。ありがとう、祐介。
お店情報は下にURLをのせておくので参考にしていただきたい。
近々日本のワイナリー見学に行こうと計画している。

http://r.gnavi.co.jp/c240800/

2009年11月14日土曜日

僕らをつなぐもの  6


 こころの傷


 目が覚めると、自宅のベットの上にいた。頭が割れるように痛い。二日

酔いのようだ。飲み過ぎたな。そう思って起きようとすると、人の気配を

感じた。

 狭いキッチンのところに誰か立っている。誰だろう。まだ夢をみてるの

か、頰をパンとたたいた。どうやら夢ではない。

 「あら、起きたの?」

 そこにいたのはKaoriだった。

 「あの、俺、昨日酔っぱらってて・・・」

 「Kohさんだいぶ飲んでいたみたいね。大丈夫?」

 「えっあっうん、ここは俺の家だよな。君がいるってことは俺昨日・・・」

 「お酒に酔った勢いでってとかなしにしてね・・・フフ」

 「あっ君は確かテーゼで声をかけてきた・・・」

 「Kaoriよ、名前忘れてない?」

 「いや、そんなことは・・・」

 「はい、コーヒー。冷蔵庫に何も入ってないわね、何もつくれないから

コーヒーだけとりあえずいれたわ」

 「あっありがとう」

 僕はようやく事の大きさに気づいた。説明しなければ、いやどうしよう。

 「彼女、いるんでしょ」

 「えっ」

 「分かるわよ、そのくらい」

 「あの、俺」

 「別にいいのよ、私は」

 なんでこうもドライでいられるのか僕には理解できなかった。昨日の印

象とは別人のKaoriがそこにいた。

 「私、帰るわね」

 「俺、君に」

 「お互い様っていうことで」

 「え?」

 そう言うとさっさとKaoriは出て行った。しばらくあぜんとしていた。

 Kaoriが出て行った後、iPhoneを手にとって見てみると、Meguからの

メールが何件もはいっていた。俺はなにをやってるんだ。激しい自己嫌悪

に胸が痛んだ。

 Meguに電話をかける。何度も呼び出し音は鳴るが、でない。留守電に

切り替わった。もう一度かけるが同じだ。メールしてみても返信されない。

 僕はMeguに気づかれたかもしれないと思った。もうこうなった以上正

直に言って謝るしかないと自分にいいきかせた。その日は結局Meguに連

絡がとれなかった。


 翌日、Meguは実家に帰っていたことが分かった。後で会う約束をする。

 そして僕たちは恵比寿にある小さな公園のベンチにいた。

 「Megu、何度も連絡くれたのに返事しなくてごめん」

 「何かあったの?」

 「いや、そういうわけじゃないけど」

 「Koh、様子がヘンだよ」

 「えっ」

 「なんかいつもと違うよ」

 「そうかな」

 「なんか、私に言えないことでもあるの?」

 「そっそんなのないよ」

 とっさにでたコトバに嘘がでてしまった。

 「ウソはいやっ! Kohおかしいもん、ぜったい」

 「・・・・・・」

 Meguの瞳に大粒の涙があふれ、こぼれ落ちた。

 「ごめん、俺酒に酔っぱらって行きずりの女と・・・」

 「Kohのバカ、信じてたのに」

 その場に泣き崩れるMeguにどんなコトバをかけていいのか分からなか

った。ただ謝るしかなかった。

 「私、今日はKohに大事な話をしようと思ってきたのに・・・」

 「大事な話って?」

 「もういい、もういいよ」

 女がきりだす大事な話はたいていの場合、別れ話かもしくは妊娠、ニン

シン? ほんとに?

 「たのむよ、Meguっ、話してくれないか」

 「Koh、私とずっと一緒にいたいって言ってたのに・・・私、私・・・」

 「Megu、まさかその・・・」

 僕はMeguの目をまっすぐ見つめた。Meguは赤い目をこすりながら静

かにコクリとうなずいた。

 「そうなの?」

 「母に相談しに行ってたの。一緒に産婦人科へ行ってもらって。2ヶ月

だって・・・」

 「俺、知らなくて・・・」

 「もういいよ、私、一人で育てる!」

 「そんなっ・・・」

 頭が真っ白になるってこいうことをいうんだなと思った。と同時に鈍器

で後頭部をおもいっきり殴られたような衝撃が走った。

 「一人にして」

 そう言うとMeguはその場から立ち去った。

 僕はしばらく公園のベンチに座ったまま動けなかった。ため息を何度も

何度もついていた。

 大切なものを僕は失いかけていた。


2009年11月10日火曜日

西天満4丁目






























                                                    

















































フリーペーパー「FLAG」の打ち合わせで西天満へ行く。
雨がしとしと降るなか、4丁目界隈をまずは散策した。1ブロックのなかに飲食店が何軒もある。他にあやしい雑貨の店や、紅茶専門店などバラエティに富んでいる。
大阪高等裁判所があるエリアだけに、法曹関係の事務所や弁護士事務所が多いが、骨董品などを扱う美術商や、ギャラリーも共存している。
30分ばかり歩き回っただけでもたくさんのショップを垣間みることができた。

今日のランチ


















マッシュルームペーストのパスタを作りました。
NHKでラ・ベットラの落合務シェフが紹介していたレシピそのままを参考にしてさっそくキッチンへ。
もうむちゃくちゃうまい。自分で言うのもなんだけど、ほんまにうまかった。ごちそうさま。

2009年11月8日日曜日

僕らをつなぐもの  5

ずれた時間


 あまりにもうまくいきすぎている気がしていた。ただMeguのまっすぐ

な気持ちに圧倒されていたのかもしれない。僕は甘えていたと思う。そし

て人生の決断をせまられることになろうとはその時はまだ分からなかった。

 僕はデザインコンペで最終選考まで残ることができた。明日勝負が決定

する。社内の誰もが今回のおまえは違うぞと言ってくれた。だがもう一人

の人はいつも採用されているベテランだ。勝てる見込みは無いに等しい。

 翌日、担当上司から名前を呼ばれたのはやはりベテランの先輩だった。

 さすがに疲れてデスクでぐったりしていたらその先輩から声をかけられ

た。おまえの作品を見て今回は正直あせったと。次はおまえだな・・・と。

 少しホッとして気持ちが楽になった。


 その日の夜、一人で西麻布のバーテーゼへ飲みにでかけた。この界隈は

僕が夜の遊び場として頻繁に通っているところだ。Meguとはあまり一緒

にこない。バーテンダーでモデルの仕事もやっているTussyがカウンター

にいた。このテーゼは、ブックバーと名乗っているとおり可動式の本棚が

備え付けており、たくさんのかっこいい本が揃っている。

 「こんばんわ、Kohさん。元気ですか?」

 「Tussyもあいかわらず、元気そうだね。ジムには通ってるのかい」

 「今、減量中です。来週から撮影なのであと3キロ落とそうとがんばっ

てます」

 「すごいね。よくやるよ。俺はぜったい無理だな」

 「Kohさん、何します?」

 「そうだな、じゃあストーンローゼスのジンジャー割り」

 「わかりました」

 生の生姜をすりおろしていれているこのカクテルはすっきりしていて、

疲れている時によく注文する。

 その夜は調子がよかったのか、かなりの量を飲んでいた。完全に酔って

いた。

 「Kohさん、さっきからあの人がずっとKohさんのこと見てますよ」

 Tussyに言われてカウンターの端を見ると、確かにこっちを向いている

二十代半ばか後半ぐらいの女性がいた。

 「Kohさんになにか言いたげですよ。どうします?」

 「どうするって?」

 「ちょっといってきます」

 「ちょっ、Tussyまてよっ」

 なかば強引にTussyに会話をもっていかれたので僕はあせった。すると

自分のグラスを持って僕の横にその女性は座った。

 「こんばんわ」

 「あっこんばんわ」

 「私、Kaoriっていいます」

 「Kohです。ここにはよく飲みに来るの?」

 「たまに。雰囲気が好きだから」

 「僕も本が好きなんで・・・仕事は何をしてるの?」

 「お茶の水でベネチアングラスのショップの店員してます」

 「そうなんだ。僕はデザイナーです。渋谷で働いてます」

 お互いの自己紹介の会話がつづいて、趣味や好きな音楽や映画の話で盛

り上がった。

 「Kohさん、素敵ですね」

 「そんなこと言われると照れるよ」

 「でも私、タイプかも」

 Tussyは気を使ってカウンターの端へ移動していた。すっと膝の上に彼

女の手がすべるように触れてきた。僕はドキっとしながらもその手をとっ

ていた。もはや本能にさからうことができない状態になっていた。

 テーゼを出てそのままホテルへ直行していた。僕はMeguを裏切ってし

まった。